ある日ベランダの壁や軒下、あるいは室外機の裏などに土でできた不格好な塊が付着しているのを見つけたことはありませんか。それは誰かのいたずらではなく「クロドロバチ」や「オオクロバチ」といったドロバチ類の巣かもしれません。ドロバチはその名の通り泥をこねて巣を作る蜂の総称でその多くは黒色をしており腹部に黄色やオレンジの帯が入っているものもいます。彼らは水場や湿った地面から適度な粘り気のある土を集め唾液と混ぜ合わせて丈夫な巣を作り上げます。その建築技術は素晴らしく壺のような形をしたものや煙突のような入り口を持つもの、竹筒や壁の穴を利用して泥で蓋をするものなど種類によって様々です。巣の中には麻痺させた青虫や蛾の幼虫が詰め込まれそこに卵が産み付けられます。孵化した幼虫は新鮮な餌を食べて育ち成虫になって泥壁を破って出てきます。ドロバチ自体は非常に大人しく攻撃性は低いです。巣の近くを通ったり洗濯物を干したりする程度で襲ってくることはまずありません。巣を棒でつついたり壊そうとしたりしない限り人間とのトラブルになることは少ないでしょう。しかし見た目がスズメバチに似ている種類もいるため恐怖を感じる人も多いのが実情です。また古い巣は別の蜂や虫に再利用されることもあります。もし生活に支障がない場所であればそっとしておいても害はありません。彼らは庭の害虫(青虫など)を狩ってくれる益虫でもあるからです。しかし洗濯物に泥がつくのが困る場合や子供の手の届く場所にある場合は駆除を検討する必要があります。駆除する場合巣の中に成虫がいないタイミングを見計らって(多くのドロバチは巣を作って卵を産むと去っていきますが種類によります)ヘラなどで削り落とすだけで十分です。中に蜂がいる場合は殺虫スプレーを使用しますが反撃のリスクはスズメバチに比べれば遥かに低いです。黒い蜂が泥を運んでせっせと行き来する姿は健気な職人のようでもあります。その泥の塊は彼らが次世代に命を繋ぐためのシェルターであり自然界のたくましさを象徴する小さな芸術作品とも言えるでしょう。