黒い蜂の中には光の当たり具合によって瑠璃色(深い青色)に輝く宝石のように美しい種類が存在します。その代表格が「ルリジガバチ」です。体長は2センチ前後で全身が金属光沢のある青黒色をしており非常に美しい見た目をしていますがその生態はなかなかにグロテスクで興味深いものです。彼らは「狩り蜂」の一種でクモを専門に狩ります。家の軒下や壁の隅、神社の灯籠の隙間などに泥を使って壺状の巣を作ることもあれば既存の穴を利用することもあります。ルリジガバチのメスはクモを見つけると素早く毒針で麻痺させます。この毒は獲物を殺さず生かしたまま保存するための防腐剤のような役割も果たします。動けなくなったクモを巣に運び込みその腹部に卵を産み付けます。そして巣の入り口を泥で塞いで立ち去ります。孵化した幼虫は新鮮なクモの肉を食べて成長しますがその際クモの生命維持に重要な臓器を最後に食べることで餌が腐るのを防ぐという巧妙な本能を持っています。人間からすれば残酷な話ですがこれも自然界のバランスを保つためのシステムです。ルリジガバチは人間に対しては非常に臆病で攻撃性はほとんどありません。巣の近くに寄っても攻撃してくることはなくむしろ人が近づくとすぐに逃げてしまいます。彼らが家の中に迷い込んでくることがありますがそれは巣を作る場所を探しているか獲物を探している最中です。窓ガラスにぶつかってブンブン言っている青黒い蜂がいたらそれはルリジガバチかもしれません。毒々しい色に見えるかもしれませんが彼らにとってはただの保護色か構造色です。殺虫剤で殺してしまうのは忍びないのでティッシュやコップを使って優しく外に逃がしてあげてください。彼らは家の中に巣食うクモを退治してくれる益虫としてのポテンシャルも秘めています。その青黒い輝きは捕食者としての冷徹さと生命の輝きを同時に放っているのです。自然観察の対象としてこれほど美しく機能的な昆虫はなかなかいません。