本好きのAさんは、ある日、大切にしている古い本のページをめくっていると、銀色に光る小さな虫が素早く這い回るのを発見しました。体長は1センチ弱、細長い体で触角があり、クネクネとした動きが特徴的です。調べてみると、それは「シミ(紙魚)」という虫でした。シミは原始的な昆虫の一種で、翅がなく飛ぶことはできません。暗くて湿気の多い場所を好み、紙や糊、繊維などを餌とします。Aさんのように、本棚や押し入れ、壁紙の裏などで見かけることが多い虫です。幸い、Aさんが発見したのは1匹だけで、本に大きな被害はありませんでした。しかし、シミは繁殖力が比較的高く、放置しておくと数が増え、本や書類、掛け軸、衣類(特に麻や綿、レーヨンなど)に食害を及ぼす可能性があります。シミによる食害は、本の表面を舐めるように削り取ったり、小さな穴を開けたりする形で見られます。特に、古い本や湿気を含んだ紙は被害に遭いやすい傾向があります。また、壁紙の糊を食べるために、壁紙の表面を傷つけたり、剥がれの原因になったりすることもあります。Aさんは、これ以上の被害を防ぐため、すぐに対策に取り掛かりました。まず、本棚とその周辺を徹底的に掃除しました。本を全て取り出し、棚板や本のホコリを丁寧に拭き取り、掃除機をかけました。次に、部屋の湿度管理を見直しました。換気をこまめに行い、除湿機を設置して湿度を50%以下に保つように努めました。シミは湿度が60%以上になると活動が活発になると言われています。さらに、本棚に防虫剤(衣類用のものでも効果がある場合がある)を置きました。ピレスロイド系の成分を含む殺虫剤を、シミが潜んでいそうな隙間や本棚の裏などに少量噴霧するのも効果的ですが、本への影響や薬剤の匂いが気になる場合は、天然成分の忌避剤などを試すのも良いでしょう。数週間後、Aさんが本棚を確認したところ、新たなシミの姿や食害の跡は見られなくなりました。Aさんは、今回の経験から、大切な本を守るためには、日頃からの清掃と湿度管理がいかに重要かを痛感したそうです。特に、長期間保管している本や書類がある場合は、定期的な点検と環境整備が欠かせません。